■ 目を修正
マツダ・ロードスターのライトは小さい。車体が小さいのに、普通車と同じ比率で縮小して、ライト全体まで縮小している。そのために、つぶらな瞳となり、ライトがはっきりせず死んだような目に見える。車自体の評価が高いだけに、まさに画竜点睛を欠くデザインの典型例となってしまった。
背の低い子供は、目(頭)が大人に近い大きさなので、相対的に目が大きく見える。だから子供は可愛いと大人には見える。アニメやキャラクターの描き方も同じだ。むしろ逆に、小さい車に、更に普通車以上の大きな目を付ければ、存在感が増す。
■ 車の評価を下げるリヤ・デザイン
後ろを見ると、赤塚不二夫のマンガ『もーれつア太郎』が思い浮かぶようなデザインである。今回のロードスターのリヤ・デザインは、多くの人が美しいと感じない点だろう。
小さい車体のデザインでは、通常、タイヤのホイールアーチを強調し、踏ん張り感を出して、実寸以上の大きな存在感を出すデザインにする。ところが新型ロードスターは逆で、人間が目と認識するテールランプが、他車にないほど寄り目なので、逆に車体が小さく見えてしまう致命的欠陥がある。
マイナーチェンジは、基幹ブランドの一貫性が重要になるから、大きく変更できない。やれるのは下記の修正程度である。丸いテールランプをトランクの横まで移動し、大きく拡大して、筒状の側面が出るように前に出す。これでよりシンプルで、遠くから見た時の存在感を増すことができる。ウインカーランプも、丸いテールランプ内に入れて無くしても良い。これが低コストで現実的なマイナーチェンジである。コストが許せば、ホンダ プレリュード 3代目のフレッチングテールやアルファ ロメオ・スパイダーコンセプト(ピニンファリーナ)のように、トランクをもっととがらせるのが良い。
■ 世界には優秀なデザイナーがたくさんいる
BoldRideというサイトにロードスターのコンセプトが載っている。これを見れば、正直、ロードスターのデザイナーもマツダのほかの社員も消費者も、BMW Z4的な性格付けで、現行ロードスターよりこっちの方ができが良いと言うだろう。BMW Z4は、BMWブランドの中の「小型」、「スポーティー」の最右翼だ。こうした車種がBMWブランドの切り込み隊長として、BMWデザインの先端を行く役割を担うのが、企業ブランド構築にとって当然だ。ところがマツダのロードスターにはそうしようとする意図が無かった。デザイン部長にその意図が無かったのか、したくてもこんなデザインになってしまったのか、デザイン部長に責任がある。マツダ全体のデザインから離れて孤立している。孤立して、非常にレベルの高いデザインの場合は問題ないが、ネットの口コミなどで見て取れるように、及第点はもらえていない下手なデザインである。デザイナーの人事評価者は消費者である。
BoldRideのコンセプトは重いので、シンプル・軽量にしてアグレッシブにすれば、マツダの顔デザインの先頭に立たせることができ、マツダ全体のブランド価値を高くすることができる。今のデザインでは、その役割、相乗効果は全く無く、逆にデザインレベルが低いから、マツダブランド全体の足を引っ張るデザインになっている。
技術は歴史の積み重ねができて、4代目ともなると、もうやりようがないところまで来ている。ところがデザインには積み重ねができない。理由は芸術品だからで、同じ椅子でも一点一点違う完成度を持っている。優秀なデザイナー(陣)が去ればホンダのように不人気になり、才能あるデザイナーが来れば、アウディやBMWのデザイナーを雇い経営トップにまでさせたヒュンダイのように突如評価が高まる。デザインレベルを上げるには技術開発より遥かに容易で、デザイナーを回転ドアの人事にして、実力主義にすればいいだけである。世界には優秀なデザイナーがたくさんいるのだから。日本の終身雇用をデザイナーにまで適用しているのが諸悪の根源で、日本車の低レベルなデザインは続くという論理だ。
(文責:相澤洋次郎)
(外部参考サイト)
マツダ技報 『新型ロードスターのデザイン』