■ 概  要

 リオデジャネイロ・オリンピックの閉会式で、安倍首相は任天堂のゲーム「スーパーマリオ」に扮したプレゼンテーションを見せ、海外の報道も絶賛した。

 東京五輪の期待値MAX。安倍マリオ、各国の反応まとめ
 

 また、日本のアニメ「ポケットモンスター」派生の「ポケモンGO」というスマートフォン向けゲームが米国で先行リリースされ、アメリカ人が車を運転しながらするほど人気が出るなど、逆に日本人が驚くほどだった。
 ゲームではなく日本のアニメについてであるが、フランス人が「UFOロボグレンダイザー」を見て育ったとか、海外の有名サッカー選手が「キャプテン翼」を見て憧れたとか、アメリカ人がハリウッド版の「ドラゴンボール」の映画制作をするなど、日本のアニメが知らないうちに海外で浸透している。夕方にアニメを見て育った日本人としては、欧米人も同じじゃないかと、変な後ろめたさが解消された安堵感を覚える。
 人が読書をしたり、映画を見たりするのは、人が心を豊かにするためである。マンガは絵付きの小説である。複雑で内心的なストーリーは、小説と何も変わるところがない。マンガは、ノーベル文学賞や芥川賞で審査されるべき選考対象作品である。日本のマンガやアニメは、子供と大人の境目がない文化で描かれ、欧米の文化的なマンガの位置づけが大きく異なる。友情や、勇気や、倫理的葛藤などが色濃く描かれる。宗教性がないのがよいとも外国人に言われている。人格形成期の子供に強い影響を与え、作家自身も、大人がこうなってはいけないぞ、理想の生き方はこれだと、教訓を込めて描いている。人格形成に手遅れになった大人向けの不倫の小説に、直木賞を与えて賞賛しているより、人格形成期の子供向けのアニメやマンガの方が、国や人類への貢献度は遥かに高い。
 高度成長期の日本人は、アメリカのハリウッド映画に出てくる、大きな車やキッチンの家電製品を見て、物質的な豊かさだけでなく、アメリカ人の正義感、幸福観、生きる目的などに憧れた。日本の歴史からは生まれてこなかった精神文化に感嘆して見た。今も世界最強のソフトパワーである。日本アニメに対しても、新興国や後進国の人々がハリウッドと同じように感じ、日本のこたつに興味を持ったり、学校ので掃除時間に驚いたり、精神文化を知ろうと訪日している。先進国の子供たちも、日本人の人間性、幸福観、精神文化に影響されている。日本のアニメやマンガにも、ハリウッド映画と同等か何分の一かの文化的影響力(ソフトパワー)があると言える。人格形成期の青少年が見る作品だから、ハリウッド以上にその国への精神文化への影響力があるとさえ言える。中国人が「クレヨンしんちゃんで、シロを散歩に連れて行く時、手に袋とトングを持っている!」と驚いている。最も精神文化への影響を受けているのが中国人だろう。この日本独自のマンガ文化を最も理解していないのが日本人と、外国人はよく言う。

 2016年8月27日、第6回アフリカ開発会議がケニアの首都ナイロビで開幕し、安倍首相が基調演説を行った。
 今、アフリカには中国製の安価な家電品があふれ、携帯電話を持つ人も多く、物質的な豊かさは満たされてきている。ただし、経済的な自立は未だ遅れ、先進国から魚をもらって、魚の釣り方を教えられていない状態でいる。そろそろ、やり方を変えるべきである。国が自立できるよう、人のモチベーションに焦点を当てるべきである。
 モノの豊かさより、心の豊かさを求めるのは、人間同じである。日本人が貧しい戦後にアメリカに憧れたのは、モノの豊かさだけでなく、心の豊かさだった。ハリウッド映画の場面の端々から、議論の仕方や論理的思考、人権とは法治とは何か、人類のルールを知った。国を良くするのは、お金でなく、文化であり、社会秩序を良くしたり、民主的手続きを学んだり、自国の政府をどうすべきか考えることである。それに必要なのは、外国からのお金やインフラ設備よりも、心を育てる倫理や道徳である。ここに日本のアニメが貢献できる。
 かつて、「アフリカは人口は多いが、労働者がいない」と言われた。経済成長に必要な資本と労働(人的資本)において、労働者と言えるのは、読み書き算盤ができる人間だからだ。今まで先進国からインフラ支援を受けて何十年も経ち、農業や資源輸出で大きな資本を得た。それでも豊富な資源がある国は、資源開発を巡る内戦や政治腐敗が起こり、逆に経済成長を妨げる「資源の呪い」と呼ばれることが起きる。今に至っても自律的成長が起きないのは、やはり人的資本に問題がある。基礎的な教育制度や職業能力というより、人の倫理観や社会への意識だろう。日本は社会の規則に従わせる教育が過剰だが、アフリカ諸国や欧米や中国はその逆である。日本独特の精神文化を子供の頃からアニメで体験するのは、個人主義的な社会では、人の教育に良い影響を与えるのではないだろうか。
 そこで、アフリカの各国の放送局に、日本のアニメを日本政府の援助で放送するようにすべきである。アフリカでは、日常的に賄賂や窃盗を行う手遅れになった大人よりも、国作りの理想を実行できる子供に投資すべきである。首相は演説で、「若者に自信と夢を持たせるため、向こう3年で5万人に職業訓練を提供する」と述べた。それも良いが、日本のアニメでもっと若い子供のうちに、自信と夢を持たせることができる。日本は今回、総額3兆円の投資を表明したが、アフリカで先行する中国は6兆円の投資を表明している。量より質が大事である。
 日本のソフトパワーを利用して、常任理事国入りの支持を得るなど考えたら、本当の支援、本当の友人とは人は思わないだろう。何が大事かストレートに支援するべきである。欧米亜の他国ができず、日本にしかできない支援は、日本アニメによる青少年への人材投資、人格形成である。