災害時に車中泊をすると死ぬ現実

 2016年4月、熊本で震度7の地震が起きました。余震が怖くて家の中で寝られず、屋外で寝たという人が多数いました。実際に、24時間以上たった深夜に再度震度7の地震が起こって、木造アパートが潰れたり、山崩れで家が埋まり、死者数は最初の震度7の時より大きく上回りました。テレビの専門家は、屋外に避難してくださいと呼びかけていました。
 地震が起きたあと、潰れる恐れのある家の中で寝ずに、自家用車で寝ていれば助かった命が多数いたのは明らかでした。東日本大震災の時も、数千人の人が真冬に何日も屋外に避難しました。避難所もなく屋外で待機するとなると、普通考えるのは雨風がしのげる自家用車しかありません。地方なら一人一台あったりします。プライバシーも守れ、避難所の代わりになるのが自動車です。
 ところがほとんどの車で、車中泊をしようとしても、座席を倒しても平らに寝ることはできません。熊本地震では車中泊の避難者に、エコノミークラス症候群が多発して、死者が多数出ていた可能性が高いことがのちにわかりました。医師が足をもんだり体操をするよう呼びかけていましたが、かないませんでした。

熊本地震:関連死3割が車中泊 「健康確認、態勢確立を」 – 毎日新聞 2018年1月4日
熊本地震「震災関連死」170人の内、24%が車中泊を経た死 2017年4月15日

対応をしない自動車メーカー

 東日本大震災が起きて10年以上経ちました。車で何週間も寝起きすることがあったのに、自動車メーカーのほとんどの車が、後部座席を倒しても、荷室とつながって平らになりません。大きな段差があったりします。トヨタのプリウスや、アウトドアを売りにするスバル・レヴォーグでさえ、あと少しで平らになるのに、中途半端に斜めです。何で気付かないの?とがっかりします。そもそも荷室の機能としても、斜めでないほうが良いです。

ほとんどの車は、平らに寝られない

 今の新型車を見ても、平らに寝られるシートを開発するような傾向は見られません。座って寝る人は世の中におらず、エコノミークラス症候群で亡くなった教訓は活かされていません。自動車会社は、震災時に車中泊をすると死んでしまう車を今も作っているわけです。
 古い車ですが、トヨタ・ナディア(5ナンバー車)は、荷室が本当に真っ平らで、凸凹が一切ありません。これが理想の荷室です。全長が180cm位あり、足が伸ばせ、畳に寝ているのと同じ気分になります。布団を敷けば大人二人が気持ちよく寝られます。

トヨタ ナディア

 このトヨタ・ナディアは私の兄弟の愛車で、カーレース観戦が好きで、山口から大分オートポリスや鈴鹿サーキット、富士スピードウェイにまで見に行っていました。その際、真っ平らな荷室に布団を敷いて車中泊します。トヨタの社長はカーレースが好きですが、そうであればレースファンと同じように、クルマ好きが鈴鹿サーキット富士スピードウェイ でしている車中泊も体験して欲しい。車のすべての体験を通して、彼らはカーレースを楽しんでいます。
 過去には、トヨタのタウンエースとライトエース(現在のノア、ヴォクシー)に、二段ベッド仕様がありました。トヨタの社員の中に、この車を知らない「本当はクルマ好きでない」社員がいるかもしれません。

トヨタ タウンエース キャニオンパッケージ、ライトエース モンタナ

公務員になりたい日本人

 有名企業であることや、給料の高さで、トヨタやソニーなどを選ぶ学生が多いのではないでしょうか。私が就職活動をした時、他の学生から、本当かわかりませんが、トヨタはクルマ好きであるかを採用基準にしていると聞いたことがあります。私はいすゞ自動車に入社できて喜んでいましたが、本当はクルマ好きではない同期が沢山いてとてもがっかりした経験があります。実際多くの調査で、大学生の約半数が「公務員になりたい」と回答し、起業意識も世界最低レベルです(どういう人間教育をしてきたのかと外国人に言われる)。
 車に興味のない、学歴だけで学生を採用すると、商品力が落ちるでしょう。スティーブ・ジョブズのような、自社商品がものすごく好きな人材を採用しないと、MBAホルダーが経営して、世界最大だったGMとクライスラーが一度倒産したのと同じことが起きるかもしれません。キャンプ用品のスノーピークは、キャンプ好きな社員や社長が自らの経験で商品開発をして成長しました。しかし有名企業になると、クルマ好きでもキャンプ好きでもない、ただの高給目当ての学生が何千人も応募してきて、見分けがつけられずに採用されてしまいます。終身雇用の日本では解雇ができない裁判判決なので、一度採用すると金銭解雇もできません(人材流動化が起きず、日本経済が衰退した原因と言われる)。ゴーン社長以前から魅力的な車を作れなかった日産のように、長期的に衰退する危険があります。

「死なない車」を作る必要

 上記のトヨタ・ナディアは、平らに作るのは簡単なことをよく証明しています。しかし固い荷室を利用するのでなく、柔らかいシートを使って、凸凹のないほぼ平らになるシートアレンジが理想です。ホンダ・S-MXがほとんど唯一の理想のシートができる車です。また、約4割を占める軽自動車の規格でも、荷室でなく柔らかいシートで平らにすることは可能で、スズキ・パレットの後部座席の金具の爪をカット加工して車中泊できるようにしたユーザーがいます。車中泊に適した車というすごく詳しく説明されている車中泊サイトがあるので、防災シェルターにもなる車を買おうとする際は参考にできます。


ホンダ S-MXの理想のシート.前席の背もたれを90度まで倒すと、自動で座面が上がる機構があれば完璧.

スズキ パレット.軽自動車でも実際にはできる.後部座席の金具の爪をカット加工したユーザーの事例(出典不明).

 日本は、山でも海でも、いつでもどこでも大地震・大津波が来ます。震災を経験した日本の自動車メーカーは、これからは自家用車を防災シェルターと捉え、プライバシーも守れる避難所として平らに寝られるシートを開発すべきです。下記のリンクのように、日産が災害時の車中泊体験をアピールしたことがあります。災害時は安全に寝られることをカタログの中で説明できるようにして、「死なない車」を作るべきでないでしょうか。海外でも、日本は自然災害が多い国だから、日本車は車内でよく寝られる“車中泊シート”機能があるのが特徴と言われたいです。キャンプや車中泊ブームだからでなく、車で寝ても死なない安全な車を作ってほしいです。

(外部参考サイト)
車中泊に適した車
北海道地震:混み合う被災地の車中泊 朝日新聞 2018年9月16日
熊本地震:関連死3割が車中泊 「健康確認、態勢確立を」  毎日新聞 2018年1月4日
熊本地震関連死、24%が車中泊を経た死 2017年4月15日
「もしもの時」の備えに—車中泊体験プログラム「#日産でやってみよう車中泊」 レスポンス 2019年3月4日

 

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