生産性を上げる一策 = 定時絶対退社 → 残務を在宅勤務

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生産性を上げる一策 = 定時絶対退社 → 残務を在宅勤務


 生産性を上げる一策として、定時絶対退社と在宅勤務の制度を、同時セットで導入する。
 この制度に対して、社員の行動は、2つに分かれる。そしてどちらに転んでも、良い結果になる。数年で見れば、生産性は上がってゆくことになる。

<行動>
行動①:
 在宅勤務をしたくない、仕事を持ち帰りたくない。→無駄な資料作成や会議を減らし、生産性が上がる。
行動②:
 物理的に仕事が終わらないので、仕事を持ち帰り、社内では在宅勤務が当たり前になる。→家なら上司の目もなく、早く切り上げたくなり、生産性が上がる。

 従来、①の定時絶対退社を導入して、仕事時間が減るから利益も減るという、当然と言える失敗が起こった(公務員以外)。生産性は上がるが、利益が下がるという事態になる。あふれた残務に対するバッファーがないため、欧州では当たり前の定時絶対退社の導入は、日本の企業は踏みきれずにいる。そこで、残った仕事は自宅でしなさいという、在宅勤務制度をセットで導入するのである。アメリカ人は仕事を自宅に持ち帰ってやることが多い。人事制度が職務給で成果主義である現れだろう(後述)。定時絶対退社にするが、残った仕事は自宅でしなさいという在宅勤務(テレワーク)制度をセットで導入するのであれば、日本の企業も、定時「自然」退社を実現する前ステップとして採用できる手法である。

<行動分析>
 定時絶対退社という制度を前にして、全社員はまず、なんとか定時まで終わらせようと、仕事のやり方の効率化に奮闘する。そして、半年程度で結果が出てくる。
 ①の、在宅勤務をしたくない、仕事を持ち帰りたくないという社員は、年齢の高い社員ほど多い。若い社員が、無駄な資料作成や会議を減らすなど権限がなく、上司の言われた仕事をやるのが基本だから、無理である。権限のある年齢の高い社員によって、本当に無駄な資料作成や会議を減らすことができる。今までしたことのない在宅勤務をしたくない彼らが、生産性を上げる組織改革を本気で考えるようになる。年齢の高い社員は、年功序列の賃金で、若い時と逆に、仕事量に見合わない高い給料を受け取っており、時間的に余裕があり、仕事時間が減るから利益も減るという事態は起こらない。半世紀前、ストップウォッチで1秒でも時間を削減していたカイゼンを、ようやくホワイトカラーにも嫌々ながら取り入れる。意思があればほとんどのことは実行できる。
 ②の、残務は在宅勤務をすればいいと考えた社員はどうなるであろうか。若い社員ほど、定時後に仕事を持ち帰り、残業を自宅で長時間する社員が出る。

<日本人特有の行動>
 ここでおもしろい人の行動分析がある。2016年8月24日、BS TBSの『外国人記者は見た!』という番組で「ニッポンの働き方は変えられるのか? - 残業が多いにも関わらず先進国の中でも労働生産性が低い日本。海外の夢のような「働き方改革」は、本当に実現できるのか?」をテーマに、安倍内閣の長時間労働を是正する「働き方改革」を議論していた。
 そこで、人事コンサルタントの城繁幸氏が、上司が帰らないから残業をする社員について、おもしろい現象で説明していた。「町内会で行う掃除で、従来、全員共同で町内全体の掃除をしていたのを、各自が自分の家の前だけを掃除すれば終了する方式に変えた。すると、今までダラダラと長時間やっていたのが、すぐに終わるように変わった。要するに、組織のためだと、組織への忠誠行動や、周りの目を気にして体面上良く思われたいため終わろうとしない。しかし、誰にも監視されず、仕事の範囲が決まった、自分の家の前だけなら、さっさと掃除を終えてしまう。」という日本人特有の行動を説明していた。
 日本人は、仕事は共同でするものと考えている。会社を「家」と同等に捉え、帰属組織への忠誠心が強い。チームで行動する日本企業の良さは、よく言われるところである。チームで共同して仕事をするのだから、同僚や上司が仕事で残るなら、自分一人帰るわけにいかないのである。

<日本の人事評価>
 残業をする理由として、城繁幸氏の例にあるような帰属組織への忠誠にプラスして、上司の人事評価が大きい。人事評価をする上司の前では、上司が残業をしていれば、当然自分もそうする。これが上司がいない自宅なら、家で残業をしたくないので、さっさと仕事を切り上げる。さっさと終わらして、風呂に入り、ビールを飲み、テレビを見ながら夕食を食べる。もし上司が、自宅にカメラがあって監視しているとなれば、8時を過ぎるまで、することがなくてもパソコンの前に座っているだろう。そんな奴隷のような社畜サラリーマンなのである。給料や昇進や地方・海外転勤に関わる人事評価は、住宅ローンもある身には人生の最優先事項であり、風呂もビールもテレビも夕食も後回しにする。
 こうなるのは、日本の人事評価は、成果主義でなく、職能主義だからである。仕事の範囲は決まってないので、何でもする。日本は職務給でなく職能給である。ジョブ・ディスクリプション=職務記述書がなく、欧米人が自分の仕事が終わればさっさと帰る理由がこれである。これが残業が減らない根本原因の一つである。アルバイトや、欧米、中国人の社員が、時間が来たり、仕事が終わればさっさと帰るのに対して、仕事の範囲は決まってない日本の正社員は、トイレ掃除でも何でもやるのである。日本の小学生が学校の掃除をする姿を見て、勉強(仕事)以外のことをするのに欧米人は驚く。外資系に就職した日本人が、同僚の仕事を手伝おうとすると、欧米人上司から越境行為として怒られるのである。仕事は明文化(=ジョブ・ディスクリプション)されており、難易度に応じて、仕事に値札(給料の金額)が付いている。これで同一価値労働同一賃金ができる。ジョブ・ディスクリプションをしていないのに、安倍内閣が言う同一労働同一賃金はできない。安倍内閣の、非正規という言葉をこの国から一掃するという「働き方改革」は、仕事に値札(給料の金額)を付ける(市場原理で付く)ことによって実現する。その仕事ができる人であれば、正社員や派遣やパートの区別は意味がなくなり、誰でもその仕事の値札の給料を受け取れる。ジェネラリスト(職能)集団よりスペシャリスト(職務)集団の方が、企業は世界で勝てるので、職務給を導入すべきである。
 日本の人事評価は、飲み屋での発言も含まれ、仕事と関係ない人間関係でも人事評価を行う。客観的基準がなく、残業を評価したり、上司個人の好みに左右され、非常に曖昧である。経団連あたりの研究所が連合と共同して、欧州の業種別組合のように、日本の業界別の共通の職務記述書を作り(ERPの業務標準化と全く同じ作業)、成果を客観評価するよう変えるべきだ。

<もし定時絶対退社→残務を在宅勤務を導入した時>
 私がいた富士通グループでは、職務記述書となる目標評価制度を入れて、職務が明文化され、年2回、上司と面談し、期初の目標内容に照らし合わせて人事評価がされた。上司は直帰やさっさと帰ることが多かったが、社員の多くは、仕事があれば結局帰らないで残業はしている。意外と長時間労働をするアメリカ的だったといえる。これをもし、定時絶対退社にして、残りは在宅勤務でやりなさいとなれば、富士通グループの全社員が、②のような行動をたどり、ビールを飲みたい、夕飯も食べたい、子供の相手をしたいとなって、早く仕事を切り上げようと奮闘するだろう。かくして富士通グループ全体の労働生産性はいくらか上がる。

<導入できない部署>
 物理的に処理できないほど、仕事の量が多いのは事実である。そうした部署は、技術系、営業系が多い。在宅勤務(テレワーク)は、特に残業が多い営業職で、直行直帰がしやすいので、何も生産しないのに給料が出る移動時間が大幅削減され、生産性が上がる。今の若者ほど、ネット上での会話や打ち合わせは支障なくできるので、どこででも仕事はできる。
 技術系は、会社の設備が必要なので、今回の2つの制度では生産性は上がらない。生産性の低いサービス業や建設業では、効果のある部署、社員数比率は少ない。しかし、それ以外の残りの部署では、生産性を上げる有効な方策である。

<効果>
 残業を含めた総労働時間の5~10%が、自分の人事評価アピールのため、あるいは町内会の掃除のように会社への帰属意識のために使われていたら、定時絶対退社と在宅勤務の導入によって、5~10%の労働生産性が向上する計算になる。 
 日本の労働生産性は、先進国で19年連続最下位、ギリシャよりも低い。日本の年間総労働時間は統計では1800時間と言われるが実際には2300時間あるとも言われ、ドイツやフランス(1400時間)より数カ月も多く働いている。日本人の働き方には、欧米と比べて無駄が多い。自分の人事評価アピールのため、あるいは会社への忠誠心を示すため、という行動は、日本の労働者に特有である(参考記事:「日本人の働き方をどう思うか外国人に聞いてみた」…「世界一非効率的」「働きすぎぶってる」「書類が大好き」)。いかに職務給でなく、人事評価が不明確な職能給に弊害があるかを示している。定時絶対退社→在宅勤務は、仕事が減っても残業し続ける社員、ネットでニュースを見ているだけの社員、夕方から仕事を本格的に始める社員も一掃できる。
 在宅勤務=テレワークが制度として会社に定着すれば、生産性向上の効果がある。通勤時の傷害に労災保険が出ており、労働者にとって通勤時間は労働時間と等しい。生産性の計算には入らないが、長い通勤時間が無くなること一つとっても、効果は大きい。金(給料)よりも社員のやる気を高める制度の方が、企業の成長に貢献する。

<導入の仕上げ>
 そして仕上げに、3,4年後に、在宅勤務のルール厳格化や勤怠管理を面倒にして、全社員が在宅勤務をやりたくない制度にする。そうすれば、定時絶対退社だけが残って、ドイツ企業のような夢の「働き方改革」が実現する。これは冗談だが、基本的に、家に仕事を持ち帰ってまでするのは不幸である、という意識を、人事部や経営トップが社風として築けば、ドイツ企業のように生産性は上がる。車の性能は追い付いたが、車を売る目的である社員の幸福度はまだ50年は追い付けない、そんな本末転倒した人間性の貧しい国なのだろう(職人気質と言い逃れするしかない。でも世界一仕事が嫌い(タワーズワトソン)自己矛盾。)。「ユニークな」と形容されてしまうドイツ企業やフランス企業のような中小企業とその社長(例:未来工業(株))が取り上げられることがあるが、上場企業では今どき流行語になったBLACK企業と呼ばれる経営をするトップが多数いる。電通の東大卒1年生社員が過労自殺したり、恥ずかしいことに「karoshi」がOxford 辞書に登録されている。欧米より遥かに高い自殺率など、幸福を求めない、あるいは知らない民族かもしれない。1ヶ月のバカンスなど永久に欲しがらない。あの島民は、人として、劣った精神文化の歴史しか持てなかった民族と欧米人は思うだろう。

<労働生産性を上げる、他の方策>
 今回の定時絶対退社→残務を在宅勤務という方策は、企業が行う労働生産性向上の一方策である。政府はいま長時間労働を是正する「働き方改革」を推進している。しかし一度一人の正社員を雇うと、定年まで解雇できず、生涯賃金数億円分の固定費になる。だから企業は解雇しやすいパートを増やし、正社員を雇うより、安くつく割高賃金の残業代を払う方を選ぶ。よって仕事が増えても、過労死するまで残業を減らす行動は取らない。
 政府の「働き方改革」で行う生産性向上策は、労働市場の流動化であり、解雇「しやすい」法律を作ることである。例えば、アップルが自動運転車プロジェクトを見直し、従業員を解雇したが、その部署が消滅するとき解雇できる。対して日本は、法律と裁判官のせいで、部署でなく企業全体が消滅しそうなときだけ解雇できる。どちらの国が、事業環境の激しい変化に対応でき、国全体で経済成長できるかは明らかである。解雇された社員は、他の成長している(求人している)企業や他の産業へ移動するので、その企業や産業はより成長できる。解雇した企業も不採算部門を切り離せて成長する。人材の流動化(=最適配置)が、国の経済を強くするのが資本主義経済なのに、雇用維持に補助金まで出すなど、逆の政策をしてきた(「家」を守る日本の文化を、会社という資本主義経済に当てはめてきた法と裁判官)。金銭解雇や36協定、企業年金のポータブル化など、政府が法律でやる仕事は多い。
 目指す究極は、多くの人が経験しているアルバイトと同じ感覚である。学生の頃を思い出すとわかる。自分の都合と合わなくなったら、目指すキャリアと違ってきたら、もう飽きたら、違うバイトに変える、という感覚を正社員でできる社会である。すぐ転職する中国人社員を見習うべきで、すぐ転職できる社会を政労使で作ることが、人を幸福にし、経済も成長する。
 人材の流動化には、まず、職務の明文化=ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)が効き、職務に値札が付き、上司の不公平な評価でなく成果主義による評価となり、その仕事ができる人であれば社内、社外、中途、女性、若者、高齢者に関係なく、正規・非正規の区別なく同一価値労働同一賃金となるわけだ。安倍内閣が言う、女性、若者、高齢者の労働参加を促すことになる。幸福の追求のためには、企業側が政府より先に人事制度改革を行う必要がある。

 

【参考資料/情報】
 ・機械化されるのは職業じゃなく、タスク。 マッキンゼーが800職業2000タスクを超分析 GIZMODO 2016年7月25日
 ・実はモチベーションと生産性が低い日本人――理由はこれだ ロッシェル・カップ 2015年02月03日
 ・『個人を幸福にしない日本の組織 太田肇 2016年2月17日
 ・電通「過労自殺」事件にみる労働生産性の低さ 池田信夫 2016年10月10日
 ・なぜ地方の人は残業しないのか 日刊工業新聞 2016年10月16日
 ・英エコノミスト紙「日本人の労働は経済に貢献していない。そんな国で過労死するのは無意味」ITmedia ビジネスオンライン 2016年10月18日

 

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